毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年2月12日号からの抜粋です)
村上:編集会議で長年「特集したい」と挙がり続けた企画をやっと実現できました。SNSで都心との情報格差はないけれど、イベントなどの体験格差は大きいと聞きます。円安でインポートが高額になり出張経費も増す中、地方でファッションを盛り上げている名店の、顔が見える特集を考えました。
五十君:群馬の「エスティーカンパニー(ST COMPANY)」を毎年訪れていますが、SNS効果で群馬でも“デスティネーションストア”として首都圏や信越からも集客できるようになっており、コロナ禍中も好調だったそうです。今回札幌でも取材をしましたが、傾向は同じでした。皆がそうとは言いませんが、いい店は地方でも注目を集めることができる。そんな時代です。
村上:愛知「ミッドウエスト(MIDWEST)」と広島「パリゴ(PARIGOT)」、首都圏にも店舗を持つセレクトのオーナー対談を企画しましたが、思った以上に情報発信に積極的でした。「ミッドウエスト」はユーチューブやTikTokを見たインバウンドが増え、「パリゴ」もブログを書くときはグーグルのアルゴリズムやSEO対策を意識して、より多くの人に来店してもらうための努力を惜しみません。人対人の付き合いと同時に、デジタル発信にも積極的と認識を改めました。
東京ではできない体験ができる
五十君:私が取材した札幌「アコースティックロック(ACOUSTIC ROCK)」はサーフィンやスノーボードのある暮らしを提案するライフスタイルショップですが、オーナーやスタッフは実際すごくうまいし、ギアの知識やアフターケアもプロショップ並み。東京から足繁く通うファッション業界人も少なくないそうで、そこで買い物して、ショップの人たちと一緒にスノースポーツを楽しんだりするんです。顧客としてコミュニティーの一員になれば、ローカルしか知らない山や波で遊ぶこともでき、むしろ東京ではできない体験ができます。圧倒的な強みだと感じました。
村上:選択肢が多い東京で全身フルコーデを買ってくれる客と長く付き合うのは難しいけれど、地方だと一生の付き合いになりえます。そう思って接客していくと、自然と店舗外での交流が増えるのかも。
五十君:どんなブランドもネットで買える時代ですが、人と人との関係性の中で買い物を楽しんでもらう、デスティネーションになる店はそういう関係性を顧客と築いていますね。