プーチ(PUIG)の2023年12月期決算は、売上高が前期比18.8%増の43億400万ユーロ(約6972億円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が同33.1%増の8億4900万ユーロ(約1375億円)、純利益が同16.5%増の4億6500万ユーロ(約753億円)の増収増益だった。全セグメントおよび全地域で2ケタ成長を達成し、21年に策定した3カ年計画にある23年の売上高30億ユーロ(約4860億円)の目標と、ビューティ市場の成長率をともに大きく上回った。フレグランスは世界的な需要増を追い風にグローバル市場で過去最高のシェアを獲得し、スキンケア事業がセグメント別で最も高い成長率を示した。
セグメント別の売上高は、フレグランス・ファッション事業が同16.6%増の31億1500万ユーロ(約5046億円)、メイクアップ事業が同23.5%増の7億7300万ユーロ(約1252億円)、スキンケア事業が同31.0%増の4億3100万ユーロ(約698億円)だった。
ファッション部門では、「ラバンヌ(RABANNE)」が新たなブランドアイデンティティーを立ち上げ、同社のブランドでは初めて売上高10億ユーロ(約1620億円)の大台を突破した。また、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)とジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)をゲストデザイナーに迎えた「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」がブランドポートフォリオの中で最も高い成長率を記録した。そのほか、「ニナ リッチ(NINA RICCI)」がハリス・リード(Harris Reed)新クリエイティブ・ディレクターによるデビューショーを開催した。
フレグランスは「ラバンヌ」
「キャロリーナ ヘレラ」がけん引
フレグランス部門は「ラバンヌ」の“ワン ミリオン”や「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」の“グッドガール”、「ジャンポール・ゴルチエ」の“ル・マーレ エリクシール”“ディヴァイン”などがけん引し、世界のセレクティブフレグランス市場で11%のシェアを獲得した。同社が強化するニッチカテゴリーの「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「バイレード(BYREDO)」も2ケタ成長を達成した。
メイクアップ部門は、発売10周年を迎えた「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」が英国のほか北米、欧州、中東、オーストラリア、シンガポールで好業績を上げたことに加え、「クリスチャン ルブタン ビューティ(CHRISTIAN LOUBOUTIN BEAUTY)」の好調、「ラバンヌ」のメイクアップライン発売もカテゴリーの成長に寄与した。
スキンケア部門でR&Dへの投資を拡大
スキンケア部門は「シャーロット ティルブリー」の主力商品である“マジック クリーム”がけん引したほか、22年に買収したコロンビアのナチュラルコスメブランド「ロト デル シュール(LOTO DEL SUR)」やインドのビューティブランド「カーマ アーユルヴェーダ(KAMA AYURVEDA)」の統合も2ケタ成長に寄与した。
同社はスキンケアカテゴリーの強化を図っており、過去2年間に皮膚科学研究に基づく仏スキンケアブランド「ユリアージュ(URIAGE)」やギリシャのナチュラルコスメブランド「アピヴィータ(APIVITA)」の研究開発への投資を拡大している。今年1月には独ドクターズスキンケアブランド「ドクター バーバラ シュトルム(DR. BARBARA STURM)」の買収を発表した。
地域別の売上高は、EMEA(欧州、中東、アフリカ)が同18.5%増の23億2200万ユーロ(約3761億円)、北中南米が同17.6%増の15億4300万ユーロ(約2499億円)、アジア太平洋が同26.1%増の4億3900万ユーロ(約711億円)だった。
欧州では、英国、スペイン、フランスがけん引。「シャーロット ティルブリー」がポーランド、スウェーデン、サウジアラビアなどEMEA内の新たな国に進出した。「カーマ アーユルヴェーダ」はロンドン・ノッティングヒルに出店したほか、英高級百貨店ハロッズ(HARROD'S)にスパをオープン。同社はウエルネスカテゴリーの拡大を図っている。
北米トラベルリテール強化のため
マイアミに拠点を開設
国別売上高で1位の米国は、「キャロリーナ ヘレラ」の香水“グッドガール”や「シャーロット ティルブリー」が継続的な成功を収め、南米ブラジル、メキシコ、チリにおける伸長をフレグランスが後押しした。同社は昨年9月、米フロリダ州マイアミにトラベルリテールのハブオフィスを開設した。これにより、ラテンアメリカ市場での足場を固め、北米トラベルリテールチャネルの成長を加速させる計画だ。アジア市場をリードする中国は、「シャーロット ティルブリー」と「バイレード」がけん引した。
マーク・プーチ(Marc Puig)会長兼最高経営責任者(CEO)は声明で、「自社ブランドの多様なポートフォリオを構築するとともにプレステージ商品に注力し、ニッチフレグランスとメイクアップにおけるリーダーシップを拡大する戦略により好業績を達成できた。中核地域である欧州と米州での地位を強化しながら、高い成長が見込まれる市場への投資を継続する。24年は『ドクター バーバラ シュトゥルム』の買収により、プレミアムスキンケアにおける基礎を固め、好スタートを切ることができた」と述べた。