毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月25日号からの抜粋です)
利川:初めて東京コレクションを本格的に取材しましたが、とても面白かったです。ショーの直後にデザイナーの声を直接聞けるので、これまで注目してこなかったブランドにも理解が増し、「もっと知りたい!」と思いました。
村上:怒涛の1週間でしたが、頑張りましたね(笑)。私は改めてちゃんと見るようになって3シーズン目。「正直、自分にはよく分からないブランドが増えている。ますます増えている」と感じました。クリエイションも含めて、「私とは違う人たちを巻き込んだ、独自のコミュニティーが成立しているんだな」と。各ブランドがどういうコミュニティーを築き、どうコミュニケーションをしているのか。アウェイでも取材を続けて、片りんだけでも感じたいと思います。
利川:お笑いというエンタメ要素を入れて、一般客も招待した「コウタ グシケン(KOTA GUSHIKEN)」や商店街でショーをした「カミヤ(KAMIYA)」、3000人を呼んだ「ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)」と、“開かれたショー”であることも東コレの魅力ですね。
村上:ミラノやパリでのショーは業界人が多いのでブランドごとにゲストが激変することはないけれど、東京はブランドごとに来場者が違いますよね。コレクションとして良かったのは?
ジェンダーを捉えることすらしない
利川:「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」はシンプルに「キレイ!」と思いました。これぞ“ジャパンラグジュアリー”だと。「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」は内面の葛藤に向き合うコレクションで、“一人の女性としての強さ”を感じました。
村上:いわゆる“女性”として外から勝手に定義されるのを嫌うというか、「“女性”としての期待を押し付けないでください」というスタンスを、“あっけらかん”と伝えようとしている印象です。「フェティコ(FETICO)」は“自分の闇”さえさらけ出す、強いコレクション。メンズはメンズで、スカートもパールも透ける素材も当たり前。“ジェンダーを捉えることすらしない”を表現しているように見えました。
利川:「カミヤ」のPR担当は展示会で「ラップスカートをブランドのアイコン商品にしたい」と言っていました。最近私の周りの男性たちも「カッコいい」より「かわいい」を「すごい!」と同義に使っているように思います。
村上:ジェンダーに対する感覚が確実に新しい時代に突入しています。2024-25年秋冬の東コレ特集はそんな新しいジェンダー観がテーマです。