河村浩三/ノーメード代表兼コロニー・クロージング=ディレクター PROFILE:大学時代のアルバイトを経て1998年ビームスに入社。ビームス ジャパン新宿店メンズクロージングフロア店長、英国ビスポーク担当、オリジナルブランドの企画・ディレクションなどを経験した後、独立。2013年、シンガポールにアパレル及びライフスタイル関連のショップ運営、デザイン、コンサルティングを行う会社ノーメードを設立。14年にセレクトショップ、コロニー・クロージングを開業。現在は日本企業のシンガポール進出支援、コンサルティング、政府系プロジェクトなどに関わる。写真は合同展「ビー・マイノリティー」に出展したシンガポールブランド「ビロ」のデザイナー2人と(中央)。
シンガポールでセレクトショップの運営や、ファッションコンサルティングなどを行う会社ノーメードを経営する河村浩三代表は、15年以上にわたるビームスでの勤務を経て、3年前にシンガポールへ渡った。現在は、家族が住む湘南とシンガポールを行き来しながら、オンオフにとらわれない柔軟なライフスタイルを実現している。
その後、既に海外で会社経営をしている友人に誘われたのがきっかけで、シンガポールでのブランド立ち上げを決意。実際に足を運んでみてマーケットとしての可能性を感じたという。「経済が急成長している中で、ファッション自体も急速に発展していると感じました。政府も力を入れて投資はしているものの、産業が追いついていないのが実情。そこで何をやるべきか考えたときに、ビームスでの経験を生かして、セレクトショップをオープンすることを思いつきました」。キャッチコピーを“オール・サマー・ロング”とし、シンガポールの気候に合う夏物だけを集めたセレクトショップ、コロニー・クロージングを立ち上げた。「シンガポールにはいろんな人種の人がいるので、例えばスタンドカラーのシャツが流行っていたとしても、インド系の人は普段から着ていたりする。トレンドと文化をミックスした“ニューコロニアル・スタイル”というコンセプトを考え、そこから実現までは早かったですね」。
「コロニー・クロージング」の新作
ショップと同名のオリジナルブランドも立ち上げ、当初は河村代表自身がデザインも手掛けていたが、現在は総合プロデュースという立場で同ブランドを統括する。「ブランドの販路が増えていくにつれ、日本企業からのシンガポール進出についての問い合わせが多くなってきました。進出に必要な条件やPRの仕方など自分がブランドをやる中で見えてきた部分もあり、自分のブランドをスタッフに任せられる部分も増えてきたので、今はこうしたコンサルティング業務が増えています」。最近はシンガポールのデザイナーから日本に進出したいという相談も多く受けるようになった。「アジアの中では間違いなく日本がナンバーワンのファッション都市。日本への憧れが強いシンガポール人のデザイナーは多いです。展示会の時期や掲載メディア、商社の存在など、日本の業界独特の部分についてアドバイスしながら彼らをサポートしています」。9月には、「コロニー・クロージング」を含む5つのシンガポールブランドを紹介する展示会「ビー・マイノリティー」を合同展ディアゲストの一部として開催。日本のセレクトショップや百貨店のバイヤーに向けて、その魅力を発信した。
湘南とシンガポールを行き来する生活については、「仕事の関係もあり、月に1回くらいは日本に戻ってきています。実は最初からそういう心づもりで会社も立ち上げました。ノーメード(NOMADE)という社名には『ノマド』という言葉もかけていて、いろんな場所に生活拠点があるのが今らしいライフスタイルなのではと考えています。実際僕の友人にもそういう人が多いです」と河村代表。大好きなサーフィンは、シンガポールに引っ越してからはバリ島で楽しむようになった。最初は戸惑ったという時間の使い方も徐々に慣れてきたという。「最初は情報も少ないし、友達もいなくて、やることがなくてどうしようと思っていました(笑)。でもだんだんと慣れてきましたね。都会だけどのんびりしていて人も優しいし、仕事をしていても安らぎます」。
現地での仕事を通して、日本のファッション業界に対する気付きもあった。「店には夏物しか置いていないので、取引先のブランドには限定で夏物を作ってもらうこともあります。そういう中で、本当に半年に一回ファッションが変わらなければいけないのかと考えるようになりました。日本でも年に2回のセール時期が毎回話題になっていますが、本質はそこではないのでは、と。シーズンに区切られるファッションに疑問を感じている人たちは日本にもいるのではないでしょうか。コロニー・クロージングではその施策として、オーダー会や新ブランドのお披露目会などのイベントを多く実施しています」。10月には「ユナイテッドアローズ」などと組み、シンガポールと日本の国交50周年を記念したイベントも開催予定だ。日本での事業展開にも意欲を見せる。「まだ先の話ですが、日本でもレストランや宿泊施設、スーベニアショップなどを兼ね備えた外国人向けの施設をオープンしたいと考えています。インバウンド需要は中国人だけではなくなってくるはず。インバウンド消費をどう作れば良いかという答えを提案していきたいと思っています」
ある一日のスケジュール
6:00 起床
7:00 ヨガプラクティス
9:00 朝食
10:00 日系デパートとミーティング
12:00 スタッフとランチミーティング
13:00 シンガポール政府機構とミーティング
15:00 店頭にて接客
20:00 終業
21:00 食事
22:00 就寝