ファッション

「人々の人生を締めなおす」 東大発ふんどしベンチャーのあくなき挑戦

 日本の伝統的な下着であるふんどし。そのふんどしで世界に挑むべく、日々まい進している企業がある。それが株式会社ふんどし部だ。同社は東京大学大学院卒の星野雄三代表により2016年に設立。“この世からパンツを消し去る”をスローガンに、ふんどしの製造・販売からそれを着用する体のトレーニング事業を手掛けている。17年にはふんどしを世に知らしめるべく、「ふんどしファッションフェスティバル(以下、FFF)」を企画し、ふんどしを主軸にしたファッションショーも行った。たった1枚の布で世界に挑もうとする星野代表に、ふんどし部創業の経緯や現在の事業、そして今後の夢をふんどし一丁で語ってもらった。

WWD:ふんどし部の現在の事業内容は?

星野雄三ふんどし部代表(以下、星野):ふんどしの製造・販売といった文化事業と、筋力トレーニングプロフグラム「バディトレ」をはじめとするカラダ事業の2軸で“人生を締めなおす”ことを目標にしています。

WWD:起業した理由は?

星野:海外に新しい日本文化をぶち込むためです。中でもふんどしを世界で表現しようとしている日本人が誰もいなかったので、下着の観点から日本の見え方をどれだけ面白くできるかを考えてみようと。そこで“この世からパンツをなくす”をスローガンに掲げ、今までの価値観の創造的破壊を行おうとふんどし事業をスタートさせました。もし僕の目の前にパンツが置かれていたら、切り刻んで魚の餌にしてやります。

WWD:……なるほど。ふんどしに着目したきっかけは?

星野:元取締役の野田貴志(現在は退職)が、ふんどしにハマっている姿を見たことですね。僕はもともとスーツが好きで、スーツ文化を学ぶためにイタリアに留学していたのですが、イタリアでもふんどしはすごくウケが良かった。文化性と、潔く肉体を表現するという2つの観点から面白がってくれて。

WWD:ふんどしの魅力とは?

星野:フリーサイズで体を締め付けない点や、蒸れずに気持ちいい点などがあります。基本的にはどのような人でも履けます。そういった意味ではダイバーシティーとも言えます。さらには、単純に人間としての潔さも表現できます。

WWD:なぜ、潔さを表現できるのか?

星野:ふんどしって絶対に身体性を問われてしまうんですよ。ある程度体が整った状態じゃないと着られないという認識がふんどしには存在していて、着用には一種の障壁がある。「ふんどしを履く」という行為は、そういった細かい体裁を気にしないということでもあるます。身体的な障壁を乗り越えるという文脈もあり、ふんどし部ではカラダ事業として「バディトレ」や、夏の朝活として「もくもく会(マッチョたちがふんどしで“もくもく”と筋トレをする会)」などのトレーニングを行っています。カラダ事業では、この21世紀、IT社会でフィジカルを持った人間を僕たちがどう生かしていくのかを非常に意識しています。

WWD:17年には「FFF」でふんどしファッションショーを開催した。その理由は?

星野:2次元の布を3次元に詰め込むことを世界に対して面白く示したかった。それを極端に分かりやすくファッションとして表現したのが「FFF」です。

WWD:「FFF」の反響は?

星野:テレビでも取り上げれるなど、認知としては広がりましたが、やはり色物として扱われてしまいました。アメリカで行われているテクノロジーの祭典「サウス・バイ・サウス・ウエスト」に出展した時もそう。最初はギャグでも良かったんですけど、あまり実売にはつながらなかった。一方でカラダ事業の方が軌道に乗り、キャッシュが回ってきたこともあって、現在はカラダ事業に振り切っています。

WWD:好調なカラダ事業に対して、ふんどしはどのように販売していく予定?

星野:インバウンドとアウトバウンドを中心に狙っていきたいですね。ふんどしはある種のアホになって楽しむことを許容してくれるウエアで、祭りやクラブ、飲み会などと同じ。それをできる限り健全に、かつ自己表現を促す方向にもっていきたい。インバウンドに関して言えば、「日本ってのは狂った国だよ」と言いながらふんどしを渡す文化を作れればと思っています。

WWD:現在、女性用のふんどしも販売しているが、今後新しい形のふんどしなども開発・販売する?

星野:生地のアップデートは行いますが、形のアップデートはしません。結局、形の改善などでふんどしの機能を突き詰めようとすると、ただパンツをより良くしたものにしかならない。女性用も同じで、「体にいい」という機能だけを表現しようとすると女性用のふんどしが生まれる。でも、もともとは女性用のふんどしは存在しなかったわけで。今後はより男性にフォーカスしていくつもりです。

WWD:気温も徐々に上がり、“ふんどし日和”となってくると思うが、今後の活動予定は?

星野:直近では7月13日に「マッスルたたら場」というものを開催します。足で板を踏んで空気を吹き込む昔の製鉄技法であるたたらとふんどしを掛け合わせ、体験売りを行う予定です。ゆくゆくはふんどしを履ける体、履いて楽しむ体を作るためのライフスタイルを築いていきたいです。

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