1990年12月6日生まれ。大東文化大学卒業後、2013年に販売職として入社。サマンサティアラプランタン銀座店に配属。オープンチャレンジ制度を経て、15年2月に新卒採用課に配属され、現在に至る PHOTO BY YUKIE MIYAZAKI
ハンドバッグをはじめ、ジュエリーやゴルフウエア、スイーツなど幅広く「サマンサタバサ(SAMANTHA THAVASA) 」ブランドを展開するのが、サマンサタバサジャパンリミテッドだ。可愛らしいデザインと、話題のセレブリティーやタレントのキャンペーンモデルへの起用などで女性たちの支持を集め、2017年2月期連結決算の売上高は354億4600万円。グループ内のバーンデストジャパンローズジャパンリミテッドではアパレルブランド「ウィルセレクション(WILLSELECTION)」や「レストローズ(L'EST ROSE)」なども手掛ける。そんな同社の新卒採用について、店舗支援部新卒採用課の風祭里織さん(以下、風祭)に聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):来年4月入社の採用は終了しましたか?
風祭:いいえ、地域によってはまだ募集しています(9月現在)。
WWD:採用目標は?
風祭:250人です。
WWD:今年4月入社は何人ですか?
風祭:4月は175人、6月入社を含めると220人です。9月は66人入社しました。
WWD:どんな理由で6月と9月に入社を分けているのですか?
風祭:6月は主に就職と共に一人暮らしを始める人たちに向けてです。社会人生活と一人暮らしを4月に同時に始めることは、とても大変です。ですから、まずは生活に慣れてから仕事を始めてもらえるように、引っ越しをする人にはこちらから6月入社をお勧めしています。ただし、入社までに最低20日は研修として店頭に入ってもらうようになっています。
WWD:なるほど。スムーズに働き始めてもらうための配慮なのですね。9月は秋採用ですか?
風祭:いいえ、卒業後に友人や家族との時間を楽しんだり、留学や旅行をしたり、運転免許を取ったりするための時間を入社前にまとめて取りたいという人は9月入社を選ぶことができます。ただしこちらは7月以降はフルタイムで店舗研修をしてもらうので、実質的な猶予期間は3カ月です。
WWD:面白いですね。確かに社会人になってしまうと長期では休めないので、入社前にやりたいことをやってもらおうということですね。
風祭:そうです。8年以上前から始まっていますが、学生からの人気も高いです。会社としても、新入社員が100人単位で4月に一気に入ってくるよりも、分散した方が受け入れやすいというのもあります。
WWD:内勤の新卒社員は何人採用しますか?
風祭:毎年10〜15人です。
WWD:欲しい人材像を教えてください。
風祭:サマンサタバサグループ3原則というのがありまして、「明るく元気」「大きな声で」「笑顔を絶やさない」という人柄重視で採用をしています。そして、素直さ、嘘をつかない、感じて考えて行動できるというのも見ています。
WWD:面接ですか?
風祭:はい。販売職に関しては、書類選考の後、集団面接および適性検査、個人面談で決めます。集団面接では、積極性や他の人が発言している時の態度なども見ています。それから、ブランド愛があるかどうかも重視しています。
WWD:希望のブランドには配属してもらえるものですか?
風祭:総合的に判断しますが、本人希望も重視します。
WWD:内勤だと選考法は違いますか?
風祭:はい。書類選考、集団面接および適性検査と一般常識試験、グループディスカッション、役員面談、社長面談になります。
WWD:内勤の新卒社員はどんなことをするのですか?
風祭:入社後に、約2週間で社内の部署紹介をします。そこで何をやりたいのか本人に改めて確認します。他にもパソコン研修をしたり、倉庫に行ったりします。
WWD:内勤の競争率は高いですか?
風祭:そうですね。およそ8割がプレス・マーケティング部を希望して応募してきます。実際、毎年複数の新卒をプレス・マーケティング部に配属しています。まずは販売職からという企業が多いので、応募はより集中しますね。
WWD:来年4月入社組にはどんな人が内定しましたか?
風祭:来年は20人くらいが入社予定ですが、そのうち2人は外国籍です。今後世界ブランドを目指す上で、外国籍スタッフの採用にも積極的ですし、語学力や海外での経験も重視しています。あと、男性の採用には苦戦していますので、私たちが男性も新卒採用しているということを知ってもらうことも課題です。
WWD:男性の採用はどのくらいですか?
風祭:今年4月入社の内勤者12人のうち、2人です。是非もっと採用したいです。
WWD:採用者に何か傾向はありますか?
風祭:最終面接は(寺田和正)社長が行いますので、そこでの判断が大きいと思います。コミュニケーション能力のレベルや人間力、本気度が問われているな、と感じます。今年度入社した人たちは皆、入社後にこういうことがしたい、3年後にこうなっていたいというビジョンが明確だったと思います。
WWD:今年の採用全般に関して、手応えはいかがでしたか?
風祭:内定は全部で288人出しています。良い人材は採用できていると思っていますが、あわよくばもっと採りたいという欲はあります。
WWD:初任給はいくらですか?
風祭:17年4月入社は19万4000円でした。18年4月は21万5000円です。内勤も販売も同一金額です。
WWD:ずいぶん上げましたね!
風祭:すごくいい方が集まってきますが、人数を確保しようと思うと給与の水準を上げていかないと難しいです。また、サマンサの社員として、いい環境で社会人スタートを切ってもらいたいという想いも込めています。
WWD:初任給が上がるということは、その先輩たちも上がりますよね?
風祭:はい。17年春入社の社員は、18年春入社の初任給よりもベースが上がりますし、それ以前に入社した社員も段階的に上げてきていて、逆転が起こらないようにしています。
WWD:基本的に勤続年数に応じて毎年ベースアップしますか?
風祭:はい。ただ弊社の場合、早く職位を得てほしいと考えています。だいたい3、4年目で職位を得ますが、一般職のままで6年目を迎えると、そこからは少しずつしかベースアップしません。
WWD:個人ノルマはないのですよね。店舗予算達成でのインセンティブのようなものはありますか?
風祭:店舗の予算達成と個人の頑張りは賞与に反映します。
オフィス内のグランピングスペース。休日に社員の子ども達と共に組み立てた。ミーティングなどに使用 PHOTO BY YUKIE MIYAZAKI
風祭さんの名札。タイプごとにストラップの色も異なっている
社長鮨のコーナー。海外からのゲストや祝い事のある時に職人を呼んで鮨を握ってもらう
東京タワーに臨むバーカウンター。カラオケの設備もあり、毎月の誕生日会などで盛り上がるという PHOTO BY YUKIE MIYAZAKI
社内にジムも併設
WWD:販売職の場合、最初の職位は何になりますか?
風祭:サブといって、店長代行ができるレベルです。その次が店舗責任者サブで、実質店長です。その次がサブリーダーといって、複数店舗を見られるレベル、後輩がショップ間異動をした際にサポートできるレベルです。この上に店長代理見習い、店長代理、本店長、さらにその上にチーフ、課長、部長、執行役員となります。細かく分かれていますが、その細かい節目によって、ショップの仕事において成長を実感してもらえる仕組みにしています。
WWD:そうすると、本店長くらいになると、店舗配属はなく、複数店舗を統括するようなイメージですか?
風祭:いいえ。弊社の販売職は執行役員まで全員店舗に所属しています。自店を運営することができない人では、その上は務まらないという考えです。
WWD:え?役員もですか?
風祭:そうです。執行役員は博多アミュプラザの店長も兼務しています。ものすごく売り上げ実績を作りますし、そういう人でないと下はついていきません。販売員としての能力は重視しますから、上の方は販売員として超一流です。どんなお店でも立て直しができる人が上に行きますので、不採算店舗のケアもできます。店長クラスはものすごく魅力的な人たちばかりで、皆の憧れでもあります。
WWD:つまり昇進は販売力重視ですか。
風祭:もちろん上に行けば行くほどマネジメント力も問われます。
WWD:売り場から本社への異動は可能なのですか?
風祭:オープンチャレンジ制度といって、募集がある本社各部署に、店舗で働く社員が応募できる制度があり、試験と面接に受かれば異動できます。私もそうなのですが、かなりの人数が実際に異動しています。
WWD:なるほど。新卒入社3年目の定着率はいかがですか?
風祭:15年度入社は479人でしたが、今秋の時点で240人でした。およそ半分です。昨年秋の時点では350人くらいでしたので、約74%。業界内の数字としては悪くない数字だと捉えています。ただ、平均勤続年数が4年弱なので、会社の目標としては5〜6年にしていきたいと考えてはいます。
WWD:継続する人の傾向はありますか?
風祭:3年目までに販売の魅力をしっかり感じられた人は長く勤務する傾向にあると思います。お客さまとの接点の中で、いい経験ができた人は残りますし、いい成長すると思います。
WWD:どんな資質の人がそうした成長ができますか?
風祭:皆さん、個性はバラバラですが、素直に人の話を聞けたり、何かあっても、反省しながら次に向けて動ける人というのは強いと思います。あとは人との関係がうまく作れるというのも大事ですね。
WWD:人事部としていい人材を採用するための工夫や努力は?
風祭:熱い想いをどう面接でうまく引き出すか、表現が苦手な人が少なからずいますので、話しやすい雰囲気作りは意識的にしています。
WWD: ユニークな研修制度はありますか?
風祭:大型類人猿分類研修といって、社員を全員「ボノボ」「チンパンジー」「ゴリラ」「オランウータン」の4つに分類して、その人の思考や行動特性を踏まえた上で、それぞれコミュケーションの取り方や仕事の進め方を工夫して円滑にやっていきましょう、というものです。
WWD:風祭さんは何なのですか?
風祭:私は「ゴリラ」です。感情を顔に出さず安定志向で、順序立てて仕事をするのが得意ですが、イレギュラーなことへの対応が苦手、という感じです。
WWD:自分で決めるんですか?
風祭:いいえ、外部の研修機関の方にお越しいただき、2時間ほどのレクチャーを受けて、診断していきます。それを名札に書いて皆公表しているんです。例えば、後輩が同じ「ゴリラ」タイプなら、順序立てた指示をしてあげた方がいいですし、上昇志向の強い「チンパンジー」タイプには、チャレンジ的要素を与えるとよく頑張るというように、お互いの特性を理解すると、よりコミュニケーションが円滑になるというものです。
WWD:面白いですね。社内にはどのタイプが多いのですか?
風祭:社長も「チンパンジー」ということもあって、「チンパンジー」です。でも、売り場は6割が、感情表現が豊かだけれど安定志向の「ボノボ」です。特に店長は「ボノボ」が多いです。
WWD:なるほど〜。研修の効果はありますか?
風祭:ありますね。まず話のネタにもなって楽しいですし、「相手は自分と違うタイプだ」と改めて認識することで、コミュニケーションの仕方も変えたりすることができ、仕事が円滑になりました。
WWD:楽しそうですね。福利厚生で特筆すべきものはありますか?
風祭:セカンドライフプラン制度は、結婚や出産を機に働き方を変えたいという希望に対応できるよう、勤務時間を調整できる制度です。店舗1600人中、100人強が利用しています。他にカフェテリア制度といって、勤続年数によってポイントがもらえるのですが、それを自己啓発や育児、介護の支援などに使えます。具体的には、料理教室や英会話教室、ベビーシッター派遣施設や介護費用の一部補助などでポイントを利用することができます。
WWD:自社製品購入の際の割引はありますか?
風祭:はい。基本は30%オフです。ただ誕生日だと50%オフになったりします。また、グループ内のアパレル会社の社員が自社製品を購入する場合は50%オフ、それを店頭で着用する場合には60%オフで購入できます。
WWD:新入社員が直接社長と話す機会はあったりしますか?
風祭:あります。本社社員は1人15分の面談が全員あります。また、毎日の朝礼には社長もおりますので、そこでも話せますし、全国の売り場にも頻繁に出向いています。
WWD:人事部としての課題や強化事項はありますか?
風祭:弊社は19年度をデジタル元年と位置付けております。その最たるものとして、採用の仕方をデジタル化していこうとしています。2000年前後に生まれた人たち向けに、企業やブランドとしてのアピールや採用情報をデジタル化した形で提供していきたいと考えています。売り手市場なので、まずエントリーしてもらうことが大事だと思います。
WWD:19年度の採用予定は?
風祭:18年度よりも多く採用できたらいいなと考えています。
WWD:毎年、入社式イベントが話題になりますよね。
風祭:入社式は新卒採用課が準備しますが、その後の懇親会は、前年度の新卒の内勤職が仕切ります。サプライズゲストはプレス・マーケティングチームが段取りします。皆、楽しみにしています。