「WWDジャパン」は2017年から、ファッション界の次世代を担う人に光を当てた特集「ネクストリーダー」を実施している。対象はファッションビジネスにかかわるあらゆる分野の若きリーダーたち。この特集を始めたのは、情熱と才能を持ち、強い信念で前へ進む若いリーダーたちを応援したいから。それぞれに専門分野があり、ネットワークと情報を持つ「WWDジャパン」の記者が日ごろの取材で出会い、応援したいと考えるネクストリーダーを推薦する。第1回目の「ネクストリーダー 2018」では14人を選定した。(この記事は2017年12月11日に掲載した「WWD JAPAN.com」からの抜粋です)
井野将之/「ダブレット」デザイナー
WWD:「ダブレット」立ち上げの経緯は?
井野:高校生の時からずっとファッションデザイナーになりたいと思ってきました。「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」の三原康裕さんは、一から仕事のやり方を叩き込んでくれた師匠で本当に感謝しています。在職中は当たり前ですがデザインの最終ジャッジは三原さんであり、自分の企画が通らなかった時に徐々に徐々に、そのアイデアを世に出したい、という気持ちが強くなりました。良くも悪くも自身で最終ジャッジし、モノ作りをしたいという気持ちが強くなり、自分のブランドを持ちたいと高校生の頃に熱く思っていた気持ちを思い出しました。在職の時は靴・小物のみの企画生産管理で、靴のブランドを立ち上げるのではミハラヤスヒロの二番煎じのブランドにしかならないと思っていた時に、パタンナーである村上高士が賛同し関わってくれたことにより、学生時代しか洋服作成の経験のない自分が、トータルアイテムの「ダブレット」を立ち上げることができました。
WWD:立ち上げからこれまでターニングポイントは?
井野:2016-17年秋冬コレクションです。このシーズンはただただ良くも悪くも出し切ろうと思い、自分が培ってきた経験をドロッと思い切り出そうと自分の青春時代の経験を元にデザインしました。これがダメだったら何をデザインしてもダメでは、というくらいの覚悟をした“博打”的なシーズンでした。このシーズンでパリのコレット(COLETTE)との取引が決まり、17年春夏パリ・メンズ。ファッション・ウイーク中にコレットのウインドーディスプレーを飾ってもらえたおかげで、海外からの問い合わせが来るようになりました。しかしその時、日本展示会スパンでやっていたため海外から、「今パリなんだけどどこの展示会場で17年春夏コレクションを見られる?」と問い合わせが来ても、「まだサンプル作っています」という状態でした。興味を持った人に見てもらうことすらできないということが悔しく、「次の17年秋冬シーズンは絶対にパリで展示会をやろう」と思い、それを実現できたことがターニングポイントだと思います。
WWD:今後の目標、夢、野望など、ファッションでどうしていきたいか、を教えてください。
井野:この1年は、海外ではロサンゼルスのブランド「424」とのコラボレーションや、ニューヨーク、ロンドンのドーバーストリートマーケット(DOVER STREET MARKET)でのインスタレーション、台湾のワンフィフティーン(ONEFIFTEEN)でのポップアップ。日本ではウィズム(WISM)でのインスタレーションや、ミッドウェスト(MIDWEST)とのポップアップなど、国内海外問わず取引先と一緒にイベントができたということはとても良い経験でした。ブランドとして僕たちにできることは商品を作ることだけではなく、その商品を店の先にいるお客さまにどう届けることが喜んでもらえることなのかを、学べました。僕らは、直営店を持っていませんし、直営店を出すつもりもありません。取引先の店と一緒に考え、協力し、打ち出し、みんなが楽しめる、それがリアルなことだと思っています。今後もお店と取り組むイベントを継続し、拡大していきたいと考えています。いつかは全世界の取引店舗で地域に合わせた全て内容の違う「ダブレット」のコレクションを一斉に発売する、とかやってみたいです。ファッションでどうしていきたいか、というかファッションというツールを使って取引先と一緒に何ができるのか、を日々考えています。まだまだ全然できていないのですが……(苦笑)。目標です!